洗濯機の掃除のやり方|槽洗浄コースの手順と所要時間
洗濯機の掃除と聞くと、洗濯槽を分解したり、ブラシで内側をこすったりする大がかりな作業を想像するかもしれません。実際にやることは、専用の洗剤を入れて「槽洗浄コース」を選び、スタートボタンを押すだけです。手を突っ込む必要も、道具をそろえる必要もありません。
ただ、ここで多くの人がつまずくポイントがひとつあります。槽洗浄コースは、機種とコースによって3時間から11時間かかります。所要時間を知らずに夕方に回し始めて、寝る前に「まだ終わらない」と止めてしまうと、せっかく浮かせた汚れが槽の中に残ったままになるのです。
この記事では、槽洗浄コースの手順を機種共通の形で整理して、コースごとの所要時間と選び分け、そして1回で汚れが落ちきらなかったときの次の一手までをまとめました。
- 洗濯機の掃除で最初に手をつける場所と順番
- 槽洗浄コースの具体的な手順と入れる洗剤の量
- 3時間コースと11時間コースの所要時間と選び分け
- 汚れが落ちきらなかったときに次にやること
洗濯機の掃除は洗濯槽から始める
洗濯機には掃除すべき場所がいくつもありますが、優先順位ははっきりしています。最初に手をつけるべきは洗濯槽です。理由は単純で、洗濯物に直接触れる場所であり、しかも自分では見えない裏側に汚れが集中しているから。糸くずフィルターや洗剤の投入口は目に見えるぶん気づけますが、槽の裏側だけは分解しない限り確認できません。ここではまず、洗濯槽に何がたまっているのか、そして槽洗浄コースがその汚れをどう処理してくれるのかを押さえておきます。
洗濯槽の汚れは裏側にたまっている

洗濯槽の汚れの正体は、洗剤カスと皮脂汚れ、そしてそれを栄養にして増えた黒カビです。パナソニックは、洗剤と汚れが結合して洗剤カス(石ケンカス)が発生し、それがタンクや外周部に付着すると、空気中にあるカビがこれらを分解しようとして黒カビになる、と説明しています(出典:Panasonic 洗濯槽の黒カビ 予防と対策)。
つまり黒カビは、湿気だけで勝手に生えているわけではありません。エサになる洗剤カスと皮脂があり、温度が保たれ、湿ったまま放置される。この3つがそろったときに繁殖します。
やっかいなのは、その汚れがたまる場所です。縦型でもドラム式でも、洗濯槽は「内槽」と「外槽」の二重構造になっていて、水が行き来するための穴が内槽に開いています。汚れは内槽と外槽のあいだ、つまりふたを開けても絶対に見えない面に付着していきます。内側をどれだけ雑巾で拭いても、そこには届きません。
洗濯物に黒い破片が付き始めたときは、この裏側の汚れが限界まで育って、剥がれ落ち始めた合図と考えられます。逆に言えば、黒いカスが出ていない段階でも裏側には少しずつ蓄積しているわけで、汚れが目に見えてから始めるより、見えないうちから定期的に回すほうが手間は小さくなります。
汚れのたまり方は、縦型とドラム式でも差が出ます。縦型は水を多く使って洗うぶん、内槽の穴から外側へ洗剤液が回りやすく、外槽の壁面に洗剤カスが層になって残ります。ドラム式は使用水量が少なく洗剤の濃度が高いため、槽の裏側よりもドアのゴムパッキンの溝や、洗剤を通す経路に汚れが集中しやすい傾向があります。同じ「洗濯機の掃除」でも、重点的に見る場所が変わるわけです。
汚れが育つ速さを決めているのは、洗剤の量と湿気の残り方です。規定量より多く洗剤を入れると溶け残りが増え、それがそのままカビのエサになります。洗濯が終わったあと数時間ふたを閉めたままにする習慣も、槽の内部を高湿度で保温する状態に近づきます。掃除の間隔を延ばしたいなら、この2つを先に見直すほうが効果は大きいでしょう。
洗濯槽の内側だけを見て「きれいだから掃除は不要」と判断するのは早計です。見えている面は毎回の洗濯で水と洗剤が流れているぶん、いちばん汚れにくい場所にあたります。
槽洗浄コースがやってくれること
槽洗浄コースは、洗濯コースの時間を長くしただけのものではありません。汚れを落とすために、通常の洗濯とは違う動きをします。
大きな違いは水位です。槽洗浄コースでは、内槽の上端に近いところまで水をためます。汚れが付いているのは内槽の外側と外槽の内側なので、そこまで水位を上げないと洗剤液が汚れに届かないからです。標準コースの水位では、洗濯槽の上のほうに付いた汚れは水に浸かりません。
次に、つけおき時間があります。日立の縦型では、槽洗浄3時間コースのつけおき時間が約1時間40分、11時間コースでは約10時間と案内されています(出典:日立の家電品 洗濯槽のお掃除(槽洗浄コース)について知りたいです。(タテ型))。洗剤が汚れを分解するには時間が必要で、この待ち時間こそが槽洗浄コースの本体だと言えます。
3つめは、すすぎの回数です。剥がれた汚れをそのまま流すと排水経路に詰まるため、槽洗浄コースでは注水すすぎを複数回繰り返します。ドラム式の槽洗浄11時間コースでは、注水すすぎ3回に加えて乾燥約50分と送風約10分まで組み込まれている機種があります。
これらを手動で再現しようとすると、水位を最高まで上げて、洗い工程の途中で一時停止して、数時間後に再開して、すすぎを何度も回す、という操作になります。コースが用意されているなら、それを使うのがいちばん確実で、失敗も少ないわけです。
もうひとつの違いは、槽の回し方です。標準コースは衣類をもみ洗いするために連続的に回転しますが、槽洗浄コースは数分回して止め、しばらく待ってまた回す、という間欠的な動きをします。これは洗剤を汚れに接触させたまま時間を稼ぐためで、回し続けるより剥がす力が働きます。運転中に長い無音の時間があっても、故障ではありません。
なお「槽洗浄」と「槽乾燥」は別の機能です。槽乾燥は温風や送風で槽の内部を乾かすもので、汚れを落とす力はありません。カビの再発を遅らせる予防策にあたります。汚れを落とす槽洗浄と、生えにくくする槽乾燥。この2つを役割で分けて覚えておくと、どちらを回すべきか迷わなくなります。
槽洗浄コースのやり方は4ステップ
ここからは実際の手順です。メーカーや機種でボタンの位置や名称は変わりますが、やることの順番はほぼ共通しています。「洗濯槽を空にする」「洗剤を入れる」「コースを選んで回す」「終わったあとの後始末をする」の4つ。特に1つめと4つめは飛ばされがちですが、ここを省くと汚れが服に付いたり、フィルターが詰まったりします。カビ対策として洗剤を使うコースは3時間前後からになるため、始める時間帯もあわせて考えておくと安心です。
機種ごとの細かな違いは取扱説明書に譲り、ここでは縦型を基準にしながら、ドラム式で操作が変わる部分をそのつど補足する形で進めます。用意するものは洗濯槽用のクリーナーが1本と、待つための時間だけです。
手順1:洗濯槽を空にして糸くずフィルターを外す

まず、洗濯槽の中に何も入っていない状態にします。日立は「洗濯槽内に衣類が残っている場合は、必ず取り除いてください」と明記しています。衣類が入ったまま塩素系の洗剤で長時間つけおきすると、色柄物なら脱色し、繊維も傷みます。
次に糸くずフィルター(縦型ではゴミ取りネット、ドラム式では排水フィルターと呼ばれることもあります)を確認します。ここに糸くずがたまったまま槽洗浄を始めると、剥がれた汚れが一気に流れ込んで目詰まりを起こし、排水エラーで運転が止まる原因になります。
縦型の場合、糸くずフィルターは付けたままでも構いませんが、たまっているゴミは先に捨てておきましょう。取り外し可能なタイプなら、いったん外して槽洗浄を回し、終わってから洗って戻す方法もあります。ドラム式の排水フィルターは、洗濯機の下部にあるふたの奥に付いていることが多く、開けると残った水が出てくるので、先にタオルを敷いておくと床を濡らさずに済みます。
最後に、洗濯機まわりの換気を確保します。塩素系の洗剤を使う場合は、密閉した洗面所で長時間運転することになるため、ドアを開けるか換気扇を回しておくのが基本です。
ドラム式では、糸くずを受け止める部品が2系統に分かれている機種が多くあります。ひとつは排水経路にある糸くずフィルター(排水フィルター)、もうひとつは乾燥機能用の乾燥フィルターです。槽洗浄の前に確認したいのは前者で、乾燥フィルターは乾燥運転を使うたびに手入れする部品と考えてください。排水フィルターは週1回程度の手入れが目安とされ、つまみを回して取り外す構造が一般的です。
この排水フィルターを外すと、内部に残っていた水が流れ出てきます。先に脱水運転を1回かけて機内の水を抜いておくと、こぼれる量を減らせます。床が濡れると防水パンの縁に水が残り、そこがまた汚れの原因になるので、タオルとバケツを用意してから作業に入るほうが結果的に手間は少なくなります。
手順2:クリーナーを入れて水をためる

洗剤を入れるタイミングは、縦型とドラム式で違います。
縦型は、槽が空の状態で洗剤を直接投入してからコースを選び、スタートを押します。水は自動でたまります。ドラム式は逆で、スタートボタンを押して給水が始まってから洗剤を入れる機種があります。ドアを閉めたまま給水するタイプでは、指定のタイミングでドアを開けて投入する手順になっているため、取扱説明書の該当ページを一度は確認しておきたいところです。
洗剤の量は、製品に書かれている使用量に従うのが原則です。記載がないときの目安として、日立は縦型で500mL、ドラム式で200mLという数字を案内しています(ドラム式の出典:日立の家電品 洗濯槽のお掃除(槽洗浄コース)について知りたいです。(ドラム式))。パナソニックは水量50Lに対して衣類用の塩素系漂白剤を約200mL、と水量あたりで示しています。
この2つは矛盾しているように見えますが、前提が違うだけです。縦型の槽洗浄は満水近くまで水を張るため、水量が50Lではなく60L前後になる機種もあり、そのぶん洗剤も多く必要になります。ドラム式は使用水量そのものが少ないので、200mLで足ります。式にすると次の関係になります。
洗剤量は3段階で決める
①洗濯槽クリーナーのパッケージに使用量の記載があれば、それが最優先(1本使い切りの指定が多い)
②記載がない場合は、お使いの洗濯機メーカーの目安に従う(日立=縦型500mL・ドラム式200mL)
③どちらも見つからないときの参考として、パナソニックの示し方(水量50Lあたり約200mL)を自分の機種の水量に当てはめる。水量60Lなら 60 ÷ 50 × 200 = 240mL
メーカーによって示し方が違うのは、対象にしている製品や水量の前提が異なるためです。数字が食い違って見えるときは、①→②→③の順で優先してください。
粉末タイプのクリーナーを使う場合は、水がたまってから入れるか、少量のぬるま湯で溶かしてから投入すると溶け残りを防げます。溶け残った粉が槽の底に沈むと、そこだけ濃度が上がって効きが偏るためです。
クリーナーには、メーカー純正品と市販品があります。純正品は濃度が高く設定されているものが多く、価格も市販品より上になりますが、そのぶん1回あたりの洗浄力は強くなります。市販品を毎月使い、年に1回だけ純正品を使う、といった組み合わせ方も選択肢のひとつでしょう。どちらを使う場合でも、パッケージに書かれた対応機種(縦型専用・ドラム式可など)の表示は必ず確認してください。
投入時に注意したいのが、洗剤の入れ口を間違えることです。液体の洗濯槽クリーナーを、洗剤の自動投入タンクに入れてしまう事故が起こりえます。自動投入タンクは毎回の洗濯で少しずつ吐き出す構造なので、クリーナーを入れると次の洗濯でも塩素系の液が出続けることになり、衣類を傷めます。槽洗浄用のクリーナーは、洗剤ケースではなく洗濯槽へ直接入れるのが原則です。
どの洗剤を選ぶかで、このあとの所要時間も変わってきます。塩素系と酸素系のどちらが自分の機種と汚れに合うかは、洗濯槽クリーナーを条件別に比べた記事で整理しているので、手元に洗剤がない段階ならそちらから読んでみてください。
手順3:コースを選んで運転する
コース選択のボタンは、機種によって「槽洗浄」「槽洗い」「洗濯槽クリーン」「お手入れ」などと表記が分かれます。時間の選択肢が出る機種では、ここで3時間か11時間かを選びます。
スタート後は基本的に放置で構いません。ただし、途中で洗濯物を入れたくなっても追加してはいけません。塩素系の洗剤が高濃度で入った状態なので、衣類が確実に傷みます。
運転中に気をつけたいのが、途中でふたを開ける操作です。つけおき中は洗濯機が停止しているように見えるため、「終わったのかな」と思ってふたを開け、そこで運転をキャンセルしてしまうケースがあります。残り時間の表示が出ない機種もあるので、スタートした時刻をメモしておくと確実でしょう。
また、槽洗浄コースの実行中は水を大量に使います。ためた水を長時間そのままにする工程が含まれるため、途中で水道の元栓を閉めたり、ブレーカーを落としたりする作業とは重ならないように予定を組んでください。
電気代を心配する声もありますが、槽洗浄コースの消費電力はごく小さく収まります。つけおき中はモーターがほとんど動かないためです。仮に平均30Wで11時間運転したとすると、消費電力量は 30W × 11h ÷ 1000 = 0.33kWh。電力量料金を1kWhあたり31円で計算すれば 0.33 × 31 ≒ 10円という水準になります。乾燥工程を含む機種ではこれより上がりますが、コースを短くして汚れを残すより、時間をかけて落としきるほうが結果的に得になる金額差でしょう。
チャイルドロックが有効になっていると、コース選択そのものができない機種があります。ボタンを押しても反応しないときは、ロックの表示が点灯していないかを先に見てください。解除はスタートボタンや特定のボタンを数秒長押しする方式が一般的ですが、組み合わせは機種で異なります。
手順4:浮いた汚れとフィルターを取り除く
運転が終わったら、そこで終了ではありません。最後の確認作業が残っています。
まず、洗濯槽の中を覗いて黒い破片が浮いていないか、槽の縁に張り付いていないかを見ます。塩素系のクリーナーを使った場合は汚れが溶けて流れるため、ほとんど残らないのが普通です。それでも破片が見えるなら、あとで説明するように汚れの量が多く、1回では出しきれていないと考えられます。
次に糸くずフィルターです。日立は槽洗浄コースの手順の最後に、運転終了後の糸くずフィルターの掃除を挙げています。剥がれた汚れがここに集まっているので、必ず確認しましょう。
仕上げに、ふたを開けたまま数時間おいて槽の内部を乾かします。せっかくカビを落としても、湿ったまま閉じてしまえば再発が早まるだけです。日立はタテ型について「ふたを開けて自然乾燥させることで、槽乾燥の代用ができます」と説明しており、槽乾燥機能がある機種ならそれを使うほうが早く乾きます。
酸素系のクリーナーを使った場合(縦型の対応機種に限ります。ドラム式は泡が多量に発生するため日立が使用しないよう案内しています)は、この工程の負担が変わります。酸素系は汚れを溶かすのではなく剥がして浮かせる働きをするため、水面に大量の破片が浮きます。それを排水する前に網などですくい取る作業が必要で、すくわずに排水すると排水経路に詰まるおそれがあります。ゴミすくい用のネットは、100円ショップで手に入る園芸用や金魚用のもので代用できます。
塩素系を使った場合でも、槽の縁や上部のフチ裏には汚れが残ることがあります。ここは水位より上にあたるため、洗剤液が届いていません。運転が終わったあとに、古い歯ブラシや使い捨ての布で縁をひと拭きしておくと、次に洗濯物を入れたときに黒い点が付くのを防げます。
槽洗浄の4ステップまとめ
①槽を空にしてフィルターのゴミを捨てる → ②指定量のクリーナーを入れる → ③槽洗浄コースを選んで最後まで回す → ④浮いた汚れとフィルターを掃除して、ふたを開けて乾かす
この手順で使うのは、洗濯機の取扱説明書が認めている洗濯槽クリーナー1本だけです。塩素系には縦型とドラム式の両方に対応した製品もあります。お使いの機種で使えるかどうかは、購入前にパッケージの対応表示をご確認ください。
槽洗浄コースの所要時間は3時間か11時間
槽洗浄コースを途中でやめてしまう最大の原因は、所要時間の見積もり違いです。「洗濯機を回す=1時間くらい」という感覚のまま始めてしまうと、3時間でも長く感じます。ここではメーカーが公表しているコース別の時間を並べて、どちらを選べばよいのかを整理します。数字は日立の機種を例にしていますが、他社でも「短時間コース」と「長時間コース」の2本立てという構成はおおむね共通しています。
時間の長さそのものよりも、いつ始めるかを先に決めておくことのほうが実際には重要になります。終わる時刻から逆算してスタート時刻を決めれば、途中で止める理由がなくなるからです。
3時間コースと11時間コースの選び分け

日立の案内では、縦型の3時間コースは「においの発生を抑制したいときに使用します」、11時間コースは「洗濯槽や洗濯物に汚れが付着したときや、においが気になるときに使用」と、目的が書き分けられています。つけおき時間はそれぞれ約1時間40分と約10時間です。
ドラム式にはさらに選択肢があり、同社の機種では槽洗浄15分(槽洗い)コース、温水槽洗浄2時間コース、槽洗浄3時間コース、槽洗浄11時間コースなどが用意されています。温水槽洗浄2時間コースの内訳は、給水・かくはん約53分、注水すすぎ1回、乾燥約30分、送風約10分です。
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| コース | 所要時間の目安 | つけおき・かくはん | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 槽洗い(15分) | 約15分 | 短時間 | ドラム内の糸くずをさっと流したいとき |
| 温水槽洗浄2時間 | 約2時間 | かくはん約53分 | 汚れは軽いが、においを抑えたいとき |
| 槽洗浄3時間 | 約3時間 | 約1時間40分(縦型) | 1〜2か月ごとの定期メンテナンス |
| 槽洗浄11時間 | 約11時間 | 約10時間(縦型) | 黒いカスが出た、においが取れないとき |
選び分けの基準は「症状が出ているかどうか」に置くとわかりやすくなります。何も起きていない状態での定期的な掃除なら3時間コース、すでに黒いカスやにおいという症状が出ているなら11時間コース。汚れがしっかり付いている状態で3時間コースを選んでも、つけおき時間が足りず、中途半端に剥がれた汚れだけが残ることがあります。
コースの呼び名はメーカーによって変わります。「槽洗浄」のほかに「槽洗い」「洗濯槽クリーン」「お手入れコース」といった表記があり、時間の選択肢を持たず1コースだけを搭載している機種も存在します。時間の選択肢がない場合は、そのコースが何時間かかるのかを取扱説明書の仕様一覧で確認しておくと、始める時間帯を決めやすくなります。
近年の機種に搭載されている「自動おそうじ」は、洗濯のたびに槽の裏側へ水を吹きかけて汚れの付着を抑える機能です。これがある機種では槽洗浄の間隔を延ばせるとされ、日立は自動おそうじ機能を設定している場合に3〜4か月に1回、設定していない場合は1〜2か月に1回という頻度を案内しています。自分の洗濯機にこの機能があるかどうかで、掃除の計画は変わってきます。
11時間コースは、就寝前にスタートして翌朝に終わらせる使い方が現実的です。夜22時に始めれば翌朝9時に終わる計算になり、待ち時間がそのまま睡眠時間と重なります。
途中で止めると汚れが戻る理由
槽洗浄コースを途中でキャンセルすると、何が起きるのでしょうか。
つけおきの途中で止めた場合、洗剤液は排水されますが、剥がれかけた汚れは槽の裏側に残ったままになります。中途半端に浮いた状態の汚れは、次に洗濯したときに水流で落ちて洗濯物に付きます。「掃除したのに黒いカスが出るようになった」という現象の多くは、この途中終了が原因と考えられます。
すすぎの途中で止めた場合はもっと直接的で、剥がれた汚れが槽内に残ります。この状態で次の洗濯を始めれば、汚れは衣類に付着します。
どうしても止めなければならないときは、キャンセルしてそのまま放置するのではなく、標準コースで「すすぎ→脱水」だけを1〜2回追加で回してください。汚れと洗剤成分を流し切ってから終わらせるほうが、被害は小さく済みます。
途中でエラー表示が出て止まった場合は、キャンセルとは事情が違います。多くは排水エラーで、剥がれた汚れが糸くずフィルターや排水経路に詰まったことが原因です。この場合はフィルターを外して汚れを取り除き、排水ホースが折れていないかを確認してから運転を再開します。汚れが大量に出ている証拠でもあるので、詰まりを取ったうえでもう一度最後まで回すほうが望ましいでしょう。
なお、11時間コースの途中で停電した場合、復帰後に運転が再開されるかどうかは機種によって異なります。再開しない機種では、そのまま放置せず「すすぎ→脱水」を回して汚れと洗剤を流してください。長時間水を張ったまま放置すると、浮いた汚れが再び槽の壁に付着してしまいます。
槽洗浄で絶対にやってはいけない組み合わせ
塩素系の洗剤と、クエン酸や酸性タイプの洗浄剤を同時に使わないでください。国民生活センターは2026年3月18日に注意喚起を出しており、スプレータイプの塩素系洗浄剤と酸性洗浄剤を浴室内で一緒に使用したところ、数分後には塩素ガス濃度が16ppmを超えたと報告しています(出典:国民生活センター 住宅用塩素系洗浄剤の使い方−まぜるな危険!浴室などで事故が発生しています−)。同センターは「塩素系洗浄剤は、必ず単独で使用しましょう」「使用後は十分に水を流し、他の洗浄剤等を続けて使用することは避けましょう」と呼びかけています。
汚れが落ちきらないときに確認する2つのこと
槽洗浄コースを最後まで回したのに、まだ黒いカスが出る。においも残っている。そんなときに「洗剤が効かなかった」と判断して別の製品を買い足すのは、少し早すぎます。汚れが落ちきらない原因は洗剤の性能ではなく、汚れの絶対量か、あるいは掃除している場所そのものにあることが多いからです。ここでは次の一手を決めるための2つの確認ポイントを見ていきます。
確認は「汚れの量が多すぎるのか」「そもそも掃除する場所が違うのか」という2択から入ります。ここを取り違えたまま洗剤だけを買い替えても、症状は変わりません。順番に見ていけば、次にやるべきことは自然に決まります。
1回の槽洗浄では終わらないことがある
何年も掃除していない洗濯機では、1回の槽洗浄ですべての汚れは落ちません。裏側に何層にも堆積した汚れは、表面から順に剥がれていくためです。
初めて槽洗浄をする洗濯機、あるいは前回から1年以上あいている洗濯機では、11時間コースを1〜2週間の間隔で2〜3回繰り返すことになります。回を重ねるごとに出てくる破片が減っていくかどうかを見て、続けるか終えるかを判断してください。減り方は汚れの蓄積量や機種によって変わるため、回数を決め打ちにせず、出方を見ながら進めるほうが確実です。
連続で回さずに間隔を空けるのは、剥がれかけた汚れが乾いて浮き上がるのを待つ意味があります。毎日回すよりも、通常の洗濯を何度か挟んだほうが効率よく落ちるケースが多いようです。
なお、この段階では洗濯物に汚れが付く可能性が高いので、槽洗浄の直後には色物や大切な衣類を洗わないほうが安全です。1回目の洗濯は、汚れても構わないタオル類から始めると被害が出ません。
3回続けても破片が減らない場合は、汚れの量ではなく別の要因を疑う段階に入ります。考えられるのは、洗剤の種類が槽の材質や汚れの性質に合っていないケース、水位が足りずに汚れの付いた面まで洗剤液が届いていないケース、そして洗濯槽そのものが劣化しているケースです。10年以上使っている洗濯機では、樹脂部品の細かなひび割れに汚れが入り込み、洗浄では落ちない状態になっていることもあります。
この段階まで来たら、分解洗浄という選択肢が視野に入ります。専門業者が洗濯槽を取り外して裏側を直接洗う作業で、費用は依頼先や機種によって幅があります。買い替えを検討している時期と重なるなら、分解洗浄の費用と残りの使用年数を並べて比べるほうが判断しやすいでしょう。いずれにしても、自分で槽を外す作業は水漏れや感電の危険があるため、行わないでください。
洗濯槽以外に原因があるケース
もうひとつ疑うべきなのは、汚れやにおいの発生源が洗濯槽ではないケースです。
洗濯機まわりで汚れがたまる場所は、洗濯槽のほかに、糸くずフィルター、洗剤・柔軟剤の投入口、ドラム式のドアパッキン、そして排水口と排水ホースがあります。槽洗浄コースが洗ってくれるのは、このうち洗濯槽と、水が通る経路の一部だけです。投入口の内側やドアパッキンの溝には、洗剤液がほとんど届きません。
特に、下水のようなにおいがする場合は槽が原因ではない可能性が高くなります。排水口の排水トラップにたまっている水(封水)が蒸発して途切れると、下水管のにおいがそのまま部屋に上がってくるためです。この場合は何度槽洗浄をしても改善しません。
洗濯物が乾いたあとに生乾きのようなにおいが残るなら、洗濯機ではなく干し方の側に原因があることもあります。部屋干しのにおいについては、部屋干しの臭いをサーキュレーターで防ぐ|生乾き臭を抑える送風と洗濯のコツで送風と乾燥時間の関係を整理しているので、あわせて確認してみてください。
部位ごとに、掃除する道具も間隔も変わります。次の表で、洗濯機まわりのどこを誰が担当しているのかを整理しておきます。
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| 場所 | 槽洗浄コースで洗えるか | 症状の出方 | 手入れの目安 |
|---|---|---|---|
| 洗濯槽の裏側 | 洗える | 黒いカス・カビ臭 | 1〜2か月に1回 |
| 糸くずフィルター | 洗えない | 糸くずが服に付く | 洗濯のたび |
| 洗剤・柔軟剤の投入口 | ほぼ洗えない | ピンクのぬめり・詰まり | 1〜3か月に1回 |
| ドアパッキンの溝 | 洗えない | 黒い点状のカビ | 週1回の拭き取り |
| 排水口・排水トラップ | 洗えない | 下水のにおい・つまり | 1〜3か月に1回 |
この表で見ると、槽洗浄コースが担当しているのは5か所のうち1か所だけだとわかります。においが取れないときに槽洗浄を繰り返しても改善しないのは当然で、残りの4か所を順番に確認していくほうが早く解決します。
なお、掃除する間隔そのものは部位ごとに違います。洗濯槽・糸くずフィルター・排水口をどのくらいの頻度で見ればよいかは、部位別の掃除頻度を早見表にまとめた記事が目安になりますよ。
洗濯機の掃除に関するよくある質問(FAQ)
槽洗浄コースはどのくらいの頻度で回せばいいですか?
間隔の目安はメーカーの案内が参考になります。日立は自動おそうじ機能が付いていない機種で1〜2か月に1回、自動おそうじ機能を設定している機種やらくメンテ搭載機種では3〜4か月に1回としています。パナソニックは月1回の槽洗浄と週1回の槽乾燥運転を案内しています。使用頻度や家族の人数によって汚れ方は変わるので、黒いカスが出る前の間隔に調整していくのが現実的でしょう。
残り時間が表示されないのは故障ですか?
故障とは限りません。槽洗浄コースは長時間のつけおきを含むため、残り時間の表示を省略している機種や、コース名だけを点灯させる機種があります。表示部に何も出ていなくても、排水音や給水音が定期的に聞こえていれば運転は続いています。判断に迷うときは、スタートした時刻を記録しておき、選んだコースの所要時間が経過するまで待つのが確実です。
槽洗浄コースがない洗濯機はどうすればいいですか?
標準コースを使ってつけおきで代用できます。高水位に設定して洗剤を入れ、洗い工程の途中で一時停止してつけおき時間をつくり、そのあとすすぎと脱水まで進める流れです。一時停止の方法は機種で異なり、電源を切ると設定がリセットされてしまうタイプもあるため、取扱説明書の「一時停止」の項目を先に確認してください。
お風呂の残り湯で槽洗浄をしてもいいですか?
おすすめできません。残り湯には皮脂や雑菌が含まれているため、洗濯槽をきれいにする目的とは逆方向に働きます。入浴剤が入っている場合はさらに注意が必要で、硫黄成分を含むものは金属部品を傷めるおそれがあります。温度の高さで汚れを落としやすくしたいときは、40℃程度のぬるま湯を給水するか、温水機能のある機種であれば温水コースを使うほうが安全です。
槽洗浄のあとにすぐ洗濯しても大丈夫ですか?
洗剤成分が残っていない状態であれば問題ありません。ただし、槽洗浄の直後は剥がれた汚れが残っている可能性があるため、1回目はタオルなど汚れても構わないものを洗うほうが安全です。塩素系のクリーナーを使ったあとににおいが気になるときは、水だけで「すすぎ→脱水」を1回追加すると和らぎます。色柄物や大切な衣類を洗うのは、その次からにしてください。
まとめ|洗濯機の掃除は時間の確保から始まる
洗濯機の掃除は、専用の洗剤を入れて槽洗浄コースを回すだけで完結します。手を汚す作業も、分解する作業もありません。難しいのは作業そのものではなく、3時間から11時間という所要時間を生活の中に組み込むことのほうです。
手順は4つに整理できます。洗濯槽を空にして糸くずフィルターのゴミを捨てる。指定量のクリーナーを入れる。槽洗浄コースを選んで最後まで回す。終わったら浮いた汚れとフィルターを掃除して、ふたを開けて乾かす。この順番を守れば、機種が変わってもやることは同じです。
コースの選び分けは症状で決めます。何も起きていない定期メンテナンスなら3時間コース、黒いカスやにおいという症状が出ているなら11時間コース。長いコースは就寝前にスタートすれば、待ち時間が睡眠時間と重なって負担になりません。
そして、1回で終わらないケースがあることも覚えておいてください。長く掃除していなかった洗濯機では、間隔を空けて2〜3回繰り返すうちに、出てくる破片が減っていきます。それでも改善しないなら、汚れの発生源が洗濯槽ではなく、投入口や排水口の側にあると考えて場所を移すほうが早く解決します。
掃除の頻度は、汚れてから決めるものではありません。黒いカスが出る前の間隔に合わせて予定を組んでおけば、11時間コースを何度も回す必要はなくなります。自動おそうじ機能の有無で目安が変わるので、自分の機種がどちらなのかを一度確認しておくとよいでしょう。
なお、ここで紹介した所要時間・洗剤量・電気代の試算は、メーカーが公表している数値や一般的な条件をもとにした目安であり、機種や契約している電力プランによって変わります。正確な情報はお使いの洗濯機の取扱説明書と、ご契約中の電力会社の料金表をご確認ください。判断に迷う症状が出ているときや、運転中に異音・異臭がある場合は、自分で対処せずメーカーのサポート窓口や販売店へ相談してください。