ヨーグルトメーカーで牛乳の種類を変えたら固まらない|原因は種類別名称にあります
いつもと同じ種菌、同じ温度、同じ時間。なのに今回だけサラサラのまま固まらない。心当たりを探しても思いつかない。そんなときに真っ先に疑ってほしいのが、牛乳です。特売で普段と違うパックを買った、低脂肪のものに変えた、コーヒー牛乳みたいなパッケージのものを使った。このどれかに当てはまるなら、原因はほぼそこにあります。
ヨーグルトメーカーで牛乳の種類を選ぶとき、見るべき場所は決まっています。パッケージの「種類別名称」という小さな欄です。ここが「牛乳」になっているかどうかで、固まるか固まらないかがかなりの確率で決まります。値段でもメーカーでもパッケージの見た目でもなく、この一行なんですね。
この記事では、まず牛乳が固まる仕組みを押さえたうえで、成分無調整の牛乳・成分調整牛乳・低脂肪牛乳・無脂肪牛乳・加工乳・乳飲料という分類ごとに、ヨーグルトメーカーでの向き不向きを整理していきます。意外と知られていない低温殺菌牛乳の落とし穴、常温保存できるロングライフ牛乳の扱い、開封済みの牛乳を使わないほうがいい理由、豆乳やアーモンドミルクなど植物性ミルクとの違いまで、ひととおり触れますね。
牛乳のことが分かると、失敗したときに何を疑えばいいかが一気に絞れます。逆にここを曖昧にしたままだと、種菌を変えたり温度をいじったりと遠回りをすることになるので、最初に押さえておく価値は大きいと思いますよ。
- 種類別名称の見方と、ヨーグルトメーカーに向く牛乳の種類
- 牛乳が固まる仕組みと、固まらない牛乳がある理由
- 低温殺菌牛乳・常温保存牛乳・開封済み牛乳の扱い方
- 豆乳や植物性ミルクを使うときの違いと注意点
ヨーグルトメーカーに合う牛乳の種類と選び方
まずは牛乳そのものの話からです。ヨーグルトメーカーで確実に固めたいなら、選ぶのは種類別名称が「牛乳」の成分無調整タイプです。
パックの側面にある「種類別名称」の欄を見れば、飲用乳として定められた7つの種類のどれに当たるかがすぐ分かります。牛乳が固まるのは、乳酸菌が作った酸によってカゼインというたんぱく質が集まるからで、pHがある地点まで下がると一気に固まります。この地点は等電点と呼ばれ、カゼインの場合はpH4.6あたりですね。低脂肪乳や無脂肪乳は乳脂肪分が0.5%以上1.5%以下と少ないぶんゆるく仕上がりますし、加工乳や乳飲料は成分が調整されているので結果が読めません。
この章では、まず見るのは種類別名称の欄であること、牛乳が固まる仕組みとカゼイン、成分無調整の牛乳が基本になる理由、低脂肪乳・無脂肪乳はゆるく仕上がること、加工乳と乳飲料が向かない理由、そして低温殺菌牛乳が固まりにくいわけを順に見ていきます。
まず見るのは種類別名称の欄

牛乳のパッケージには、法令で表示が決まっている「種類別名称」という欄があります。だいたい成分表示の近くにある小さな枠で、ここに「牛乳」「成分調整牛乳」「低脂肪牛乳」「加工乳」「乳飲料」といった言葉が書かれています。商品名ではなく、この欄が中身を決めています。
飲用乳として定められている種類は全部で7つです。「牛乳」と名前がつくのが、牛乳・特別牛乳・成分調整牛乳・低脂肪牛乳・無脂肪牛乳の5種類。それに加工乳と乳飲料の2つを足して7種類、という整理になっています(出典:Jミルク「牛乳類の種類」)。
この欄がどこにあるかというと、たいていはパックの側面で、栄養成分表示や原材料名と同じブロックの中です。上のほうに小さく「種類別 牛乳」あるいは「種類別名称 乳飲料」と書かれています。文字が小さいので見落としがちですが、一度どこにあるか覚えてしまえば、次からは1秒で確認できるようになりますよ。
ややこしいのは、商品名だけでは判別できないことです。「まろやか仕立て」「北海道」「特濃」といった名前がついていても、種類別名称が「乳飲料」なら中身は牛乳とは別物です。逆に地味なパッケージでも種類別名称が「牛乳」なら、それが標準品ということになります。
ヨーグルトメーカーで牛乳を選ぶときの優先順位
- まず「種類別名称」の欄を見る
- 「牛乳」=成分無調整なら基本的に問題なし
- 「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」は作れるがゆるくなる
- 「加工乳」は商品によって差が出る
- 「乳飲料」は向かない
ちなみに、どの種菌を使うかで最適な牛乳が変わるわけではありません。市販ヨーグルトを種にする場合も粉末種菌を使う場合も、牛乳の選び方は同じです。種菌側の選び方については市販と粉末の違いや温度・費用の目安をまとめた記事で扱っているので、そちらとあわせて読んでもらえると全体像がつかめると思います。
牛乳が固まる仕組みとカゼイン
なぜ牛乳の種類でここまで差が出るのか。理由を知っておくと、初めて見る商品でも判断できるようになります。
牛乳の中には、カゼインというたんぱく質が細かい粒になって浮かんでいます。普段は互いに反発しあってバラバラの状態を保っているのですが、乳酸菌が牛乳の中の乳糖を分解して乳酸を作ると、液が少しずつ酸性に傾いていきます。そしてある地点まで酸性が進むと、カゼインは反発しあう力を失って、いっせいに集まって固まります。
この「ある地点」は等電点と呼ばれ、カゼインの場合はpH4.6あたりです。ヨーグルトが固まるというのは、乳酸菌が牛乳をこのpHまで酸性にした結果、カゼインが網目状につながって水分を抱え込んだ状態のことなんですね。
ここから逆算すると、固まる条件が見えてきます。カゼインが十分に入っていること、乳酸菌のエサになる乳糖があること、この2つがそろっていれば固まります。逆にカゼインが薄められていたり、乳糖以外の成分が多かったりすると、うまくいきません。種類別名称の違いは、要するにこの2つがどれだけ入っているかの違いなんです。
できあがったヨーグルトの表面に、うっすら黄色っぽい水が浮いていることがありますよね。あれがホエイ(乳清)です。カゼインが網目を作って縮むときに、抱えきれなかった水分が押し出されたもので、傷んでいるわけではありません。長く発酵させるほど酸性が進んで網目が縮むので、ホエイの量も増えていきます。分離が気になるときは、発酵時間を少し短くすると抑えられます。
もうひとつ効いてくるのが、カゼイン以外のたんぱく質である乳清たんぱく質(ホエイ)です。これは加熱すると変性する性質があり、変性するとカゼインと結びついて、固まったときの網目をより緻密で丈夫なものにします。この話は低温殺菌牛乳のところでもう一度出てきます。
成分無調整の牛乳が基本になる理由
種類別名称が「牛乳」のものは、生乳100%で成分を調整していないタイプです。法令上の基準として、乳脂肪分3.0%以上、無脂乳固形分8.0%以上と決まっています。無脂乳固形分というのは、脂肪分を除いた固形の成分で、カゼインを含むたんぱく質もここに入ります。
ヨーグルト作りで効いてくるのは、じつは乳脂肪分よりも無脂乳固形分のほうです。カゼインの量がここで決まるからですね。種類別名称が「牛乳」なら無脂乳固形分8.0%以上が保証されているので、固まる材料はそろっていることになります。
逆に、乳脂肪分が高い=固まりやすい、とは限らない点も知っておくと迷いません。生クリームを足したような濃厚タイプは口当たりこそ濃くなりますが、固まりを支えているのはあくまでカゼインです。パッケージの「濃厚」「特濃」という表現に引っぱられず、無脂乳固形分の数値を見るほうが判断は正確になります。栄養成分表示にたんぱく質の量が書かれているので、そこを比べるのも手ですね。
「特別牛乳」という種類もありますが、これは特別な許可を受けた施設で搾られた牛乳で、店頭で見かけることはほとんどありません。見かけたら成分的には問題なく使えます。
迷ったら種類別名称が「牛乳」のものを選ぶ。これが最も確実で、いちばん再現性が高いやり方です。銘柄やメーカーを変えても、この欄が「牛乳」であれば結果は大きく変わりません。逆に言えば、失敗が続いているときはここを確認するだけで解決することが多いです。
低脂肪乳・無脂肪乳はゆるく仕上がる

低脂肪牛乳は、生乳から乳脂肪分の一部を取り除いたものです。基準では乳脂肪分0.5%以上1.5%以下、無脂乳固形分は8.0%以上と決まっています。無脂肪牛乳はさらに脂肪を減らしたもので、乳脂肪分0.5%未満です。
ここで注目してほしいのは、どちらも無脂乳固形分は8.0%以上という点です。つまりカゼインの量は「牛乳」と同じ水準が確保されています。だから低脂肪牛乳でもヨーグルトは作れますし、実際に固まります。
どうしても低脂肪牛乳でしっかりした固さを出したい場合は、スキムミルク(脱脂粉乳)を少し加える方法があります。大さじ2〜3杯ほど溶かしてから発酵させると、無脂乳固形分が増えるぶん固まりやすくなります。カロリーを抑えつつ食感も欲しい、という場面では使える手ですね。ただし入れすぎると粉っぽさが出るので、少なめから試すのがおすすめです。
スキムミルクは製菓材料の売り場やネットで手に入ります。1kgあると牛乳の種類にかかわらず濃さを調整できるので、1つ置いておくと便利ですよ。
では何が変わるのかというと、食感です。乳脂肪分が少ないぶん、できあがりがあっさりして、とろみが控えめになります。しっかりした固さを期待していると「固まっていないのでは」と感じることがありますが、多くの場合はきちんと発酵しています。スプーンですくったときに形が残るかどうかで判断してみてください。
| 種類別名称 | おおまかな成分の目安 | ヨーグルトメーカーでの向き | 仕上がり |
|---|---|---|---|
| 牛乳(成分無調整) | 乳脂肪分3.0%以上/無脂乳固形分8.0%以上 | ◎ 基本 | しっかり固まる |
| 成分調整牛乳 | 無脂乳固形分8.0%以上 | ◯ 作れる | 商品により差が出る |
| 低脂肪牛乳 | 乳脂肪分0.5〜1.5%/無脂乳固形分8.0%以上 | ◯ 作れる | あっさり・ややゆるめ |
| 無脂肪牛乳 | 乳脂肪分0.5%未満/無脂乳固形分8.0%以上 | ◯ 作れる | さらにあっさり |
| 加工乳 | 無脂乳固形分8.0%以上(乳製品を加える) | △ 商品による | 成分によって差が出る |
| 乳飲料 | 基準は業界の自主ルール | ✕ 向かない | うまく固まらない |
成分調整牛乳は、生乳から水分や乳脂肪分の一部を除いたものです。無脂乳固形分は8.0%以上あるので作れますが、何をどれだけ調整しているかは商品ごとに違います。濃厚さを売りにしたタイプなら、むしろしっかり固まることもありますよ。
加工乳と乳飲料が向かない理由
ここからが要注意ゾーンです。加工乳は、生乳に脱脂粉乳やバターなどの乳製品を加えて作られています。無脂乳固形分は8.0%以上あるので、理屈のうえでは固まる材料はあります。ただ、加える乳製品の種類や量によって性質が変わるため、商品ごとに結果がばらつきます。うまくいくものもあれば、ゆるく仕上がるものもある、という位置づけですね。
加工乳の代表が、いわゆる「濃厚」タイプと「低脂肪」タイプです。濃厚タイプは脱脂粉乳やクリームを足して成分を濃くしたもので、無脂乳固形分が高めなぶん、しっかり固まることがあります。一方、加工乳の低脂肪タイプは脱脂粉乳を水で戻して作られていることがあり、こちらは風味も食感も控えめになります。同じ「加工乳」でも中身の方向性が逆なので、一度試して結果を覚えておくのが早いです。
問題は乳飲料です。乳飲料は、乳成分にコーヒーや果汁、糖類、カルシウムや鉄分といった栄養成分を加えたものを指します。乳等省令ではなく、業界の自主基準である公正競争規約で定められている区分です。
乳飲料が向かない理由は2つあります。ひとつは、乳成分が薄められていてカゼインの量が足りないこと。もうひとつは、加えられた成分が発酵を邪魔することがあることです。コーヒー牛乳やフルーツ牛乳が向かないのは想像しやすいと思いますが、見落としがちなのが「カルシウム強化」「鉄分入り」といった栄養強化タイプです。パッケージは普通の牛乳とよく似ているのに、種類別名称は乳飲料になっています。
牛乳売り場では、パッケージの見た目が似ている乳飲料が普通の牛乳と並んで置かれていることがあります。特売品や栄養強化タイプを選ぶときは、レジに行く前に種類別名称の欄を一度確認してください。作ってから気づくと、牛乳1本と種菌1回分、それに1日近い時間を無駄にすることになります。
低温殺菌牛乳が固まりにくいわけ
ここが、種類別名称だけでは見抜けない唯一の落とし穴です。種類別名称が「牛乳」であっても、低温殺菌牛乳の場合はうまく固まらないことがあります。
市販の牛乳の多くは、120〜130℃で数秒間という超高温で殺菌されています。一方の低温殺菌牛乳は、63〜65℃で30分といった低めの温度でじっくり殺菌します。生乳本来の風味が残ると人気があるタイプですね。
この殺菌温度の違いが、固まり方を変えます。さきほど触れた乳清たんぱく質(ホエイ)は、加熱によって変性します。生卵がゆで卵になるのと同じ変化ですね。そして変性したホエイはカゼインと結びつき、酸で固まるときにより丈夫な網目を作ります。ところが低温殺菌牛乳では、この変性が十分に起きていません。結果として、乳酸発酵しにくく固まりづらくなります(出典:日本乳業協会「乳と乳製品のQ&A」)。
つまり低温殺菌牛乳は、飲む分にはおいしいけれどヨーグルト作りには不利、ということになります。どうしても使いたい場合は、あらかじめ鍋で85℃前後まで温めてから冷まして使うと固まりやすくなりますが、手間を考えると素直に超高温殺菌のものを選ぶほうが楽かなと思います。
殺菌方法はパッケージの側面や裏面に「130℃ 2秒間」「65℃ 30分間」のように書かれています。種類別名称のすぐ近くにあることが多いので、あわせて見ておくと確実です。
ヨーグルトメーカーの牛乳選びでつまずく点
ここからは、分類の話だけでは解決しない実務的なポイントです。結論から言うと、いちばん避けたいのは開封済みの牛乳を使うことで、種類の違いよりこちらのほうが失敗に直結します。
一度開けた牛乳は、注ぐたびに空気に触れますし、口をつけたコップや手からも菌が入ります。乳酸菌以外の菌が先に増えてしまえば、どんなに良い牛乳でもきれいには固まりません。一方、常温保存牛乳(LL牛乳)は殺菌温度がむしろ高いので、ホエイの変性という点でも不利にはならず、問題なく使えます。豆乳やアーモンドミルクは固まり方そのものが違うので、初めて作るときはいつもより早めに一度様子を見るくらいでちょうどいいと思います。
この章では、常温保存牛乳(LL牛乳)は使えるか、開封済みの牛乳を使わないほうがいい理由、豆乳・植物性ミルクで作るときの違い、そして牛乳の種類より効いてくる量と温度という条件を順に見ていきます。
常温保存牛乳(LL牛乳)は使えるか

スーパーの常温棚に置かれている紙パックの牛乳、いわゆるロングライフ牛乳(LL牛乳)。災害備蓄用に買い置きしている人も多いと思います。これはヨーグルトメーカーで使えるのでしょうか。
結論から言うと、使えます。LL牛乳は超高温で殺菌したうえで、光と空気を通さない容器に無菌状態で充填したものです。種類別名称は「牛乳」で、成分も通常の牛乳と同じ基準を満たしています。殺菌温度がむしろ高いので、ホエイの変性という点でも不利にはなりません。
常温で長期間もつと聞くと保存料が入っているのではと心配になるかもしれませんが、そうではありません。中身は普通の牛乳で、殺菌の徹底と容器の構造でもたせています。容器は紙とアルミ箔とポリエチレンを重ねた多層構造になっていて、光も酸素も通しません。菌が入らず、酸化も進まないから常温で置けるという理屈です。
むしろ利点もあります。未開封なら常温で数か月もつので、思い立ったときにすぐ作れます。冷蔵庫の場所を取らないのもいいところですね。開封前は常温でかまいませんが、開けたら普通の牛乳と同じように冷蔵庫で保存して早めに使い切ってください。
注意点は、開けたてを使うことです。LL牛乳は無菌充填されているぶん開封前は清潔ですが、開けた瞬間から普通の牛乳と同じ扱いになります。パックを開けたらすぐ種菌を入れる。これが基本です。
買い置きしておくなら、種類別名称が「牛乳」で常温保存できるタイプが扱いやすいです。冷蔵庫の場所を取らないので、作りたいときにすぐ開けられますよ。
開封済みの牛乳を使わないほうがいい理由
冷蔵庫に半分残った牛乳。もったいないので使いたくなりますが、ヨーグルト作りには向きません。理由は雑菌です。
一度開けた牛乳は、注ぐたびに空気に触れ、口をつけたコップや手からも菌が入ります。冷蔵庫に入れていても菌はゆっくり増えていきます。この状態の牛乳を40℃前後で数時間温め続けると、乳酸菌だけでなく雑菌にとっても好条件になってしまうんですね。
結果として起きるのが、固まらない・変な臭いがする・分離するといったトラブルです。せっかくの種菌が、増えた雑菌に押されて力を発揮できなくなります。ヨーグルトメーカーは温度を保つ道具であって、菌を選別する道具ではないので、ここは入り口で防ぐしかありません。
もうひとつ見落としやすいのが、注ぎ口に直接口をつけて飲んだ牛乳です。唾液に含まれる菌と酵素が入るので、冷蔵庫に戻しても劣化が早く進みます。家族で飲む牛乳とヨーグルト用の牛乳を分けておくと、この事故は防げます。ヨーグルトをよく作る家庭なら、1本は開けずに取っておくルールにしてしまうのが確実ですね。
どうしても残った牛乳を使いたい場合は、開封から1日以内のものにとどめて、鍋で一度沸騰直前まで加熱してから冷まして使う方法があります。ただしこの一手間をかけるくらいなら、新しいパックを開けたほうが確実です。できあがったヨーグルトの日持ちについては、自家製が何日もつかをメニュー別にまとめた記事も参考にしてみてください。
豆乳・植物性ミルクで作るときの違い
牛乳以外で作りたい場合、いちばん現実的なのが豆乳です。豆乳には大豆由来のたんぱく質が含まれていて、乳酸菌が作る酸によって固まる性質があります。仕組みは牛乳と似ていますが、固まるたんぱく質が大豆たんぱく質である点が違います。
豆乳を使うなら無調整豆乳が向いています。大豆固形分が多く、たんぱく質の量が確保されているからです。調整豆乳は砂糖や油脂、香料が加えられていて大豆固形分が少なめなので、ゆるく仕上がったり、発酵の進み方が読みにくくなったりします。
豆乳で作る場合、時間の感覚も少し変わります。大豆たんぱく質は牛乳のカゼインより早く固まり始めることがあるので、牛乳と同じつもりで放置すると、酸味が強く出たり分離したりします。初めて豆乳で作るときは、いつもより早めに一度様子を見るくらいでちょうどいいと思います。仕上がりの色も、牛乳より少し黄みがかった感じになります。
アーモンドミルクやオーツミルクはどうかというと、こちらはかなり難しいです。たんぱく質の量が牛乳や豆乳に比べて少なく、固まるための材料が足りません。飲み物としては優秀ですが、ヨーグルト作りの材料としては別物と考えたほうがいいと思います。市販の植物性ヨーグルトが作れているのは、増粘剤などで質感を作っているケースが多いためです。
植物性ミルクでどうしても作りたい場合は、市販の植物性ヨーグルトを種にする方法もあります。ただしこの場合も、元の飲料にたんぱく質が少ないという条件は変わらないので、飲むヨーグルトのような状態にとどまることが多いです。固形のヨーグルトを目指すなら、牛乳か無調整豆乳を使うのが現実的だと思います。
| 材料 | 固まる主成分 | 向き | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 牛乳(成分無調整) | カゼイン | ◎ | いちばん安定する |
| 無調整豆乳 | 大豆たんぱく質 | ◯ | 牛乳より発酵が早いことがある |
| 調整豆乳 | 大豆たんぱく質(少なめ) | △ | ゆるく仕上がりやすい |
| アーモンドミルク | たんぱく質が少ない | ✕ | 固まる材料が不足 |
| オーツミルク | たんぱく質が少ない | ✕ | 同上 |
なお、種菌によっては豆乳に対応していないものもあります。パッケージに「牛乳専用」と書かれている場合は、そのとおりに使ってください。正確な情報は公式サイトをご確認ください。
量と温度|牛乳の種類より効く条件
最後に、種類の話とセットで押さえておきたい条件を2つ挙げておきます。じつは牛乳の種類を正しく選んでいても、ここを外すと固まりません。
あわせて、牛乳の量そのものも見ておく価値があります。容器いっぱいに入れると、中心部まで温度が届くのに時間がかかります。特に冷蔵庫から出したての牛乳を満量入れた場合、外側は発酵が進んでいるのに中心はまだ冷たい、という状態になりがちです。指定された容量を守り、迷ったら少なめに作ると失敗が減ります。
1つめは、牛乳と種菌の比率です。種菌には「1包で牛乳1L」のように対応量が決まっています。牛乳を多くしすぎると菌の密度が足りず、発酵が進みません。逆に種菌を増やしても早く固まるわけではなく、味のバランスが崩れます。パッケージの既定量を守るのがいちばん確実です。
2つめは温度です。一般的なヨーグルトなら40℃前後が標準ですが、これは使う菌によって変わります。カスピ海ヨーグルトのように常温に近い温度帯で発酵するタイプもありますし、ケフィアのように25℃前後で長時間かけるものもあります。牛乳が正しくても、菌に合わない温度では固まりません。
同じヨーグルトメーカーでも、麹のみで作る甘酒は60℃前後と、まったく別の温度帯を使います。前回のレシピの設定が残ったままスタートしていないか、これも確認する価値がありますよ。
もうひとつ、意外と効くのが容器の清潔さです。牛乳が正しく、比率も温度も合っているのに固まらないときは、容器やスプーンに残った雑菌が原因のことがあります。使うたびに熱湯をかけて自然乾燥させておけば、この可能性は除外できます。原因を1つずつ消していくと、最後に残ったものが本当の原因です。
この2つと牛乳の種類、あわせて3点。固まらないときはこの順に確認していけば、原因はだいたい特定できます。数値はいずれも一般的な目安なので、お使いの機種と種菌の説明書もあわせてご確認ください。
ヨーグルトメーカーの牛乳の種類についてよくある質問
特売の安い牛乳でもヨーグルトは作れますか?
種類別名称が「牛乳」であれば、価格に関係なく作れます。乳脂肪分3.0%以上・無脂乳固形分8.0%以上という基準は法令で決まっているので、安い牛乳でも成分は満たしています。注意が必要なのは、安さを打ち出した商品の中に種類別名称が「乳飲料」や「加工乳」のものが混ざっている場合です。値段ではなく種類別名称の欄で判断してください。
牛乳を冷蔵庫から出してすぐ使っても大丈夫ですか?
使えますが、庫内が設定温度まで上がるのに時間がかかるぶん、発酵の立ち上がりが遅くなります。セットする10〜15分前に冷蔵庫から出しておくと、その時間を短縮できます。ただし長時間の常温放置は衛生面でおすすめできないので、あくまで少し前に出す程度にとどめてください。
低脂肪牛乳で作ったらシャバシャバでした。失敗ですか?
失敗とは限りません。低脂肪牛乳は乳脂肪分が少ないぶん、あっさりしてとろみが控えめに仕上がります。スプーンですくったときに形が残る、容器を傾けたときにとろりと動く、といった状態であれば発酵は進んでいます。しっかりした固さがほしい場合は、種類別名称が「牛乳」のものに戻してみてください。
低温殺菌牛乳しか手元にありません。何かできることはありますか?
鍋に移して85℃前後まで温め、人肌まで冷ましてから使うと固まりやすくなります。加熱によって乳清たんぱく質が変性し、カゼインと結びつきやすくなるためです。ただし温度計が必要ですし、鍋を洗う手間も増えます。頻繁に作るなら、ヨーグルト用には超高温殺菌の牛乳を別に用意しておくほうが現実的だと思います。
まとめ|ヨーグルトメーカーと牛乳の種類
ヨーグルトメーカーで牛乳の種類を選ぶとき、やることは1つだけです。パッケージの種類別名称の欄を見る。ここが「牛乳」なら成分無調整で、乳脂肪分3.0%以上・無脂乳固形分8.0%以上が保証されているので、そのまま使って問題ありません。
低脂肪牛乳や無脂肪牛乳も、無脂乳固形分は同じ8.0%以上なので作れます。ただし乳脂肪分が少ないぶん、あっさりしてゆるめの仕上がりになります。これは失敗ではなく、そういう仕上がりだと理解しておくと迷いません。
避けたいのは乳飲料です。乳成分が薄められていてカゼインが足りず、加えられた成分が発酵を邪魔することもあります。カルシウム強化や鉄分入りのタイプは見た目が牛乳そっくりなので、買う前の確認が効きます。加工乳は商品によって差が出るので、うまくいかなかったら別の商品を試す、くらいの位置づけですね。
そして種類別名称だけでは分からない例外が、低温殺菌牛乳です。種類別名称は「牛乳」でも、殺菌温度が低いためたんぱく質の変性が足りず、固まりづらくなります。飲んでおいしい牛乳と、ヨーグルトにしやすい牛乳は必ずしも一致しないというのは、覚えておくと役に立つ知識だと思います。
常温保存できるロングライフ牛乳は、種類別名称が「牛乳」で殺菌温度も高いので、ヨーグルト作りとは相性がいい部類です。買い置きしておけば、思い立ったときにすぐ作れます。逆に開封済みの牛乳は、雑菌が増えている可能性があるぶん向きません。新しいパックを開けて、開けたらすぐ種菌を入れる。この流れが失敗を減らします。
牛乳が正しくても固まらないときは、種菌との比率と設定温度を疑ってください。この3点を順に見ていけば、原因はほぼ特定できます。一度に複数を変えず、1つずつ動かすのが近道です。
なお、この記事で挙げた成分の基準は法令で定められた数値ですが、実際の商品の成分値は商品ごとに異なります。殺菌方法や大豆固形分などの表示もあわせて、正確な情報は公式サイトをご確認ください。健康上の目的で乳製品の摂り方を変えたい場合は、最終的な判断は専門家にご相談ください。