電子レンジは何度まで温まる?ワット数と温度の関係
「600Wって何度になるの?」という疑問、けっこう多いんですよね。オーブンなら180度や200度と温度で設定しますし、同じ調理家電なのだから電子レンジにも対応する温度がありそうな気がします。
ところが電子レンジのワット数は、温度の設定ではありません。1秒あたりにどれだけのエネルギーを食品へ送り込むか、という量を表しています。だから同じ600Wでも、温める量と時間が違えば到達する温度はまったく変わります。
この記事では、水を何度上げるのに何秒かかるのかを計算で示したうえで、量とワット数を変えたときの目安を表にまとめます。狙った温度のお湯を作りたい人にも、そのまま使える形にしました。
- ワット数が温度ではなくエネルギーの量である理由
- ワット数と量ごとの到達温度・所要時間の目安
- 100度で温度の上昇が止まる仕組み
- 温度を狙う調理で低ワットが有利になる理由
ワット数は温度ではなくエネルギーの量
まず、いちばんの誤解を解いておきましょう。ここを押さえると、あとの数字がすべてつながります。
ワット数を上げても設定温度にはならない

電子レンジのワット数は、オーブンの温度設定とはまったく別のものです。
オーブンの180度は、庫内をその温度に保つという指示です。庫内が180度に達すればヒーターの働きは弱まり、下がればまた強まる。温度そのものを目標にした制御ですね。
電子レンジのワット数は違います。ワット(W)は「1秒あたり何ジュールのエネルギーを出すか」という単位で、温度の目標を含んでいません。600Wというのは、1秒ごとに600ジュール分のエネルギーを食品へ送り込むという意味です。
ということは、レンジは目標温度を持たず、エネルギーを送り続けるだけということになります。何度になるかは、送り込んだエネルギーの合計と、温める対象の量で決まるわけです。
「600Wは何度ですか」という問いに一つの答えが返ってこないのは、このためなんですね。
ただし、まったく温度と無縁かというとそうでもありません。「自動あたため」や「お任せ」といったメニューには、温度に関わる仕組みが入っています。
機種によって方式は違いますが、代表的なのは次の3つです。
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| 方式 | 何を見ているか | 特徴 |
|---|---|---|
| 重量センサー | 庫内に置かれたものの重さ | 量から必要な時間を推定する |
| 蒸気(湿度)センサー | 加熱で出る水蒸気の量 | 温まった度合いを間接的に判断する |
| 赤外線センサー | 食品表面の温度 | 温度そのものを見て加熱を止める |
つまり自動メニューは、センサーの情報をもとにレンジ側が加熱時間を決めているわけです。ワット数を選んで時間を入力する手動の操作とは、根本的に仕組みが違います。
だからこそ、自動メニューでうまくいかないときの原因は手動とは別のところにあります。庫内が汚れていてセンサーが正しく読めない、ラップをかけたせいで蒸気が検知されない、といったことが起こり得ます。どのセンサーを積んでいるかは機種ごとに異なるので、取扱説明書で確認してみてください。
低い出力を細かく選べるかどうかは機種によって差があるので、買い替えのときに確かめておきたい点です。置き場の寸法・容量・機能の順に絞り込む手順をまとめた記事もあるので、選ぶ段階で見てみてください。
水100グラムを1度上げるのに必要なエネルギー
では、何度になるかはどう計算するのでしょうか。ここは水を例に見ていきましょう。
水は、1グラムを1度上げるのにおよそ4.2ジュールのエネルギーが要ります。この値を使えば、必要なエネルギーがそのまま計算できます。
水100グラムなら「100 × 4.2 = 420ジュール」で1度上がる計算です。600Wは1秒に600ジュールを送るので、1秒で1.4度ほど上がることになります。
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| 項目 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 水の比熱 | 約4.2 ジュール/グラム・度 | 1グラムを1度上げるのに要るエネルギー |
| 水100gを1度上げる | 420 ジュール | 100 × 4.2 |
| 600Wが1秒で出す | 600 ジュール | ワットの定義そのもの |
| 1秒あたりの上昇 | 約1.4度 | 600 ÷ 420 |
この考え方が分かれば、必要な時間は割り算だけで出せます。式は「必要なエネルギー ÷ ワット数」です。
覚えるのは2つの式だけです。必要なエネルギー = 重さ(g)× 4.2 × 上げたい温度差、そしてかかる時間 = そのエネルギー ÷ ワット数。この2つで、どんな量・どんなワット数でも所要時間が出せます。細かい数字が面倒なら「600Wなら水100グラムが1秒で1.4度」だけ覚えておけば十分ですよ。
たとえば水100グラムを20度から80度まで、つまり60度ぶん上げたいとしましょう。必要なエネルギーは「100 × 4.2 × 60 = 25,200ジュール」。これを600Wで割ると42秒になります。
ここで一つ補足しておきます。4.2という数字は水のものであって、食材が変われば値も変わります。この「1グラムを1度上げるのに要るエネルギー」を比熱と呼びます。
比熱が小さいものほど、少ないエネルギーで温度が上がります。つまり同じ600Wでも、温度の上がる速さは中身によって違うということです。
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| 種類 | 比熱の目安 | 600Wで100gが1秒に上がる温度 | 水と比べた速さ |
|---|---|---|---|
| 水 | 約4.2 | 約1.4度 | 基準 |
| ごはん | 約3.3 | 約1.8度 | 約1.3倍 |
| 肉(赤身) | 約3.4 | 約1.8度 | 約1.2倍 |
| 植物油 | 約2.0 | 約3.0度 | 約2.1倍 |
いちばん目を引くのが油でしょう。同じエネルギーで水の2倍の速さで温度が上がるため、油分の多い料理は局所的に高温になりやすいわけです。揚げ物の温め直しやカレーで「一部だけ異常に熱い」ことがあるのは、この性質が関わっています。
なお、これらの値は食品の水分量によって変わるため、あくまで一般的な目安です。細かい数値を追うよりも、油分が多いものほど早く熱くなるという傾向を覚えておくほうが実用的ですよ。
同じ600Wでも到達温度が変わる理由
ここまで来ると、冒頭の疑問に答えが出せます。同じ600Wでも到達温度が変わるのは、変数が3つあるからです。
1つめは時間。エネルギーの総量は「出力×時間」で決まるので、長く加熱すればそれだけ温度は上がります。600Wで20秒と60秒では、入るエネルギーが3倍違います。
2つめは量。同じエネルギーでも、温める相手が多ければ1グラムあたりの取り分は減ります。水100グラムなら1秒で1.4度上がるところ、200グラムなら0.7度、300グラムなら0.5度弱です。
そして3つめが中身です。前の項で見たとおり、比熱が違えば同じエネルギーでも上がり方が変わります。水100グラムが1秒で1.4度なら、同じ量の油はおよそ3度です。
この3つが掛け合わさるので、「600Wは何度」という一つの答えは原理的に存在しません。逆に言えば、時間・量・中身の3つが決まれば温度は計算できるということでもあります。
実際の料理では、これに容器の材質や庫内での置き場所も加わります。厚手の陶器はそれ自体が熱を吸うため、同じ時間でもぬるく仕上がりがちです。計算はあくまで出発点として使い、最終的にはご自身の機種での結果を基準にしてください。
ここまでの計算は水だけを想定した理論値で、実際の到達温度はこれより低くなります。容器が熱を吸い、庫内の壁からも熱が逃げ、マイクロ波のすべてが食品に届くわけでもないためです。数値はあくまで一般的な目安として使い、正確な仕様はお使いのモデルの取扱説明書をご確認ください。
ワット数と量ごとの到達温度の目安
考え方が分かったところで、実際に使える数字を並べます。すべて水を20度から温めた場合の計算値です。
600Wで水100gが何度まで上がるか

まずは基準として、水100グラムを600Wで温めたときの表です。マグカップに半分ほどの量だと考えてください。
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| 目標の温度 | 上げる幅 | 必要なエネルギー | 600Wでの時間 |
|---|---|---|---|
| 40度 | 20度 | 8,400 ジュール | 14秒 |
| 50度 | 30度 | 12,600 ジュール | 21秒 |
| 60度 | 40度 | 16,800 ジュール | 28秒 |
| 80度 | 60度 | 25,200 ジュール | 42秒 |
| 100度 | 80度 | 33,600 ジュール | 56秒 |
並べてみると、時間と温度がきれいな比例になっているのが分かります。1度上げるのに0.7秒、20度なら14秒という一定の関係ですね。ワット数が温度ではなくエネルギーの量である、という話がここに表れています。
量が増えると同じ時間で温度は上がらない
次に、量を変えたらどうなるかを見ます。すべて20度から80度まで、600Wで温めた場合です。
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| 水の量 | 必要なエネルギー | 600Wでの時間 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 100g | 25,200 ジュール | 42秒 | カップ半分ほど |
| 150g | 37,800 ジュール | 1分3秒 | マグカップ1杯ほど |
| 200g | 50,400 ジュール | 1分24秒 | 大きめのカップ1杯 |
| 300g | 75,600 ジュール | 2分6秒 | スープ皿1杯ほど |
| 500g | 126,000 ジュール | 3分30秒 | 小鍋1杯ほど |
量が5倍になれば時間も5倍。ここは素直な比例です。同じ時間だけ温めても、量が違えば到達温度はまったく別になるということが数字で確認できますね。
逆に言えば、レシピの時間どおりに温めても思ったほど熱くならないとき、いちばん疑うべきは量です。レシピが100グラムを想定しているのに200グラム入れていれば、同じ時間では半分の温度上昇にしかなりません。
ここで、量とは別に大きく効いてくる条件があります。冷凍状態から温める場合です。
氷を水に変えるには、温度を上げるのとは別のエネルギーが必要になります。これを融解熱と呼び、水1グラムあたりおよそ334ジュールが要ります。同じ1グラムを80度近く上げるのと同じ量のエネルギーが、温度を1度も上げないまま消えていく計算です。
冷凍庫から出したマイナス18度のもの100グラムを、60度まで温める場合を計算してみましょう。
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| 段階 | 内容 | 必要なエネルギー |
|---|---|---|
| ① | マイナス18度から0度まで温める | 3,780 ジュール |
| ② | 氷を水に変える(融解) | 33,400 ジュール |
| ③ | 0度から60度まで温める | 25,200 ジュール |
| 合計 | — | 62,380 ジュール(600Wで1分44秒) |
注目してほしいのは②の大きさです。全体の半分以上を、氷を溶かすことだけに使っています。0度の水100グラムを60度にするなら42秒で済むのに、冷凍状態からだと2.5倍の時間がかかる計算になります。
冷凍食品の加熱時間が長めに設定されているのは、この分が上乗せされているからなんですね。解凍を挟む場合、時間の見積もりは倍以上を想定しておくとずれが小さくなりますよ。
ワット数を変えたときの到達時間
最後に、同じ水200グラムを20度から80度まで温めるのに、ワット数ごとで何秒かかるかを並べます。
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| ワット数 | 20度→80度にかかる時間 |
|---|---|
| 200W | 4分12秒 |
| 500W | 1分41秒 |
| 600W | 1分24秒 |
| 700W | 1分12秒 |
| 800W | 1分3秒 |
| 1000W | 50秒 |
ここで大事なのは、どのワット数でも最終的に到達する温度は同じだという点でしょう。違うのはそこへ至る速さだけ。200Wでも4分12秒かければ80度になりますし、1000Wなら50秒で同じ温度に届く計算です。
狙った温度のお湯を作りたいときは、この表を逆に使ってください。たとえば水200グラムで40度のぬるま湯なら600Wで28秒、60度なら56秒、90度なら1分38秒が計算上の目安になります。
レシピのワット数が手持ちの機種と違うときは、先に時間を直しておくと計算が合います。600Wと500Wの換算係数と早見表をそのまま使える形でまとめた記事も参考になるかなと思います。
ただし、この表がそのまま当てはまらない場面もあります。1つは高出力の維持時間です。1000Wや900Wは短時間の加熱を想定した設計の機種が多く、一定時間が過ぎると自動的に出力が下がることがあります。長時間の加熱で高出力を選んでも、表どおりに進まないのはこのためです。
もう1つは、表示されているワット数の意味です。電子レンジの出力表示は消費電力ではなく、加熱に使われる高周波の出力を指します。この値は一定量の水を温めたときの温度上昇から算出する方法で定められているので、計算に使うならこちらの数字が正しいことになります。
とはいえ、その出力がすべて食品に届くわけではありません。庫内の壁や容器に吸われる分があるため、実際の所要時間は計算値より長くなります。表の値は最短の目安と考えて、そこから調整していくとよいでしょう。
100度で温度の上昇が止まる仕組み
ここまでの計算には、大きな例外が1つあります。100度という壁です。
沸騰後は温度が上がらず蒸発に使われる
表では100度まで並べましたが、実際にはその先が続きません。水は100度で沸騰し、それ以上は温度が上がらなくなるからです。
エネルギーの投入が止まるわけではありません。送り込まれたエネルギーは、温度を上げる代わりに水を水蒸気へ変える働きに使われます。これを気化熱と呼びます。
この気化熱がかなり大きいのがポイントです。水1グラムを1度上げるのに4.2ジュールでしたが、1グラムを蒸発させるにはおよそ2,257ジュールが要ります。実に500倍以上のエネルギーです。
つまり100度に達したあとは、いくら加熱を続けても温度計の数字はほとんど動かず、水がどんどん減っていくだけになります。「もっと熱くしたい」と時間を延ばしても意味がない、というのはこういう理由なんですね。
逆に、これは温度を安定させる仕組みでもあります。汁物を温めすぎても100度を大きく超えないのは、この性質のおかげです。
ただし、この「100度の壁」があるのは水を多く含むものに限られます。油には当てはまりません。
油は水よりずっと高い温度まで液体のままなので、加熱を続ければ温度は上がり続けます。しかも比熱が水の半分ほどなので、上がる速さも倍です。計算上は、油100グラムを600Wで53秒温めると20度から180度まで届くことになります。
これは揚げ物の温度帯であり、発煙が始まる領域に近い数字です。水のような自動的な歯止めが働かないため、油分の多いものを長く加熱するのは避けてください。少量の油であっても、加熱しすぎは発煙や発火につながるおそれがあります。
砂糖の多いものも似た性質を持ちます。水分が飛んだあとは100度を大きく超えて焦げていくため、加熱時間を長く取らないようにしましょう。
沸騰しないまま高温になる突沸に注意
もうひとつ、100度付近では知っておくべき現象があります。突沸と呼ばれるものです。
ふつう水は沸騰するとき、容器の傷や気泡を足がかりにして泡を作ります。ところが電子レンジは水そのものを内側から温めるため、静かな水面のまま100度を超えてしまうことがあります。
この状態でスプーンを入れたり、容器を動かしたりすると、ためこまれた熱が一気に泡になって噴き出します。液体が飛び散ってやけどにつながる、危険な現象です。
起きやすい条件もはっきりしています。一度沸かしたものを冷まして再加熱するとき、水中に溶けていた空気が減っているため泡の足がかりが少なく、突沸につながりやすくなります。表面がなめらかな新しい容器も同じ理由で起きやすいとされます。
牛乳やスープのようにとろみや膜のあるものは、さらに条件が重なります。表面に張った膜が蒸気を閉じ込め、下にたまった熱が一気に抜ける形になるからです。
突沸は水だけでなく、牛乳・コーヒー・スープ・みそ汁など幅広い液体で起こり得ます。加熱の前にスプーンなどでかき混ぜておく、加熱しすぎない、取り出す前に少し待つ、取り出した直後に強くかき混ぜない、といった点に気をつけてください。とくに乳幼児の飲み物を扱うときは、加熱そのものを控えめにするのが安全です。詳しい注意事項はお使いの機種の取扱説明書と、消費者庁など公的機関の案内をご確認ください。
温度を狙うなら低ワット×長時間
ここからは応用です。同じ温度に届くなら高出力のほうが早いのに、なぜ低ワットが勧められる場面があるのかを説明します。
高出力は表面だけ先に熱くなる

理由は、レンジの温まり方そのものにあると言えるでしょう。
マイクロ波は食品の表面から数センチの深さまでしか届きません。そこで熱が生まれ、中心部はその熱が伝わってくるのを待つ形で温まっていきます。
ここに時間差が生まれます。高出力で一気に加熱すると、表面近くの温度だけが急上昇し、中心へ熱が伝わる時間が足りません。結果として、外側は熱すぎるのに中心は冷たいという状態になります。
低出力ならエネルギーの入り方がゆるやかなので、表面で生まれた熱が内部へ移動する余裕ができます。同じ総量のエネルギーでも、入れる速さで仕上がりが変わるわけですね。
どのくらいの差になるかは、厚みで決まります。マイクロ波が届くのは表面から数センチなので、厚さ2センチほどの薄いものなら全体にほぼ直接エネルギーが入ります。この場合は高出力でも大きなムラは出ません。
問題になるのは、それより厚いものです。中心へ届かせるには熱伝導を待つしかなく、待つ時間の分だけ表面が過熱されていきます。厚みがあるものほど低出力の効果が大きいと考えてよいでしょう。
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| 加熱のしかた | 温度の分布 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 高ワット×短時間 | 表面が高く中心が低い | 飲み物・薄いもの・急ぎのとき |
| 低ワット×長時間 | 全体が近い温度になる | 厚みのあるもの・温度を狙う調理 |
低出力が有利になる調理と使い方
低ワットが効くのは、狙いの温度帯が狭い調理です。
たとえばチョコレートを溶かす場面。カカオバターは温度が上がりすぎると分離したりざらついたりするため、ゆっくり温度を上げる必要があります。高出力で一気に加熱すると、混ぜたときには全体がまだぬるいのに一部だけ焦げている、ということが起こります。
バターを柔らかくする、クリームチーズを室温に戻す、ゼラチンを溶かすといった作業も同じでしょう。どれも「溶ければよい」のではなく「特定の温度帯で止めたい」という共通点があるんですね。
使い方のコツは3つあります。
- 短く区切る。一度に長く設定せず、20〜30秒ごとに止めて状態を見ます
- 途中で混ぜる。温度差をならすことで、局所的な加熱しすぎを防げます
- 余熱を計算に入れる。加熱を止めたあとも熱は中心へ伝わり続けます
3つめは見落とされがちです。取り出した直後にまだ足りないと感じても、1分ほど置くとちょうどよくなっていることがあります。追加するかどうかは、少し待ってから決めるとよいでしょう。
一方で、温度を低く抑えてはいけない場面もあります。加熱不足が衛生上の問題になる食品です。
厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、加熱調理食品について中心部が75度で1分間以上に達していることを確認する、という考え方が示されています(ノロウイルスによる汚染のおそれがある食品は85〜90度で90秒間以上)。(出典:厚生労働省 大量調理施設衛生管理マニュアル)
これは大量調理の現場に向けた基準であって家庭にそのまま適用されるものではありませんが、加熱の目標は「熱そうに見えること」ではなく中心部の温度だという考え方は、家庭でも役に立ちます。
電子レンジは中心が最後に温まるので、外側の熱さだけで判断すると危険な場合があります。肉や魚を加熱するときは低ワットで時間をかけ、中心まで熱が届いたことを確かめてください。判断に迷うときは加熱を足し、食品の表示や公的機関の案内に従うようにしましょう。
中心の温度を目で判断するのは難しいので、確かめたいなら先端の細い調理用の温度計が確実です。この記事で扱った40度から180度あたりを1本でカバーできる測定範囲かどうかを見て選んでください。狙った温度のお湯を作りたい場面でも、計算値との差を確かめる道具になりますよ。
低出力の設定が無い機種でも、代わりの手はあります。600Wで10秒だけ動かして20秒休む、という区切り方をすれば、平均すれば低出力に近い入り方になりますよ。手間はかかりますが、狙った温度で止めたいときには有効な方法ですよ。
電子レンジの温度とワット数のよくある質問(FAQ)
600Wは何度になりますか?
600Wという表示に対応する温度はありません。ワット数は1秒あたりに送り込むエネルギーの量を表すもので、温度の設定ではないからです。到達する温度は、加熱した時間と温める量の2つで決まります。目安として、水100グラムを600Wで温めた場合は1秒あたり約1.4度上がる計算になり、20度から80度にするには42秒ほどかかります。ただし容器や庫内へ逃げる熱があるため、実際はこれより長くなるのが普通です。あくまで一般的な目安としてお使いください。
40度や80度のお湯を電子レンジで作れますか?
計算で目安は出せます。水200グラムを20度から温める場合、600Wなら40度で約28秒、60度で約56秒、80度で約1分24秒が計算上の値です。ただし、これは水だけを考えた理論値で、実際は容器が熱を吸うぶん低めに仕上がります。正確な温度が必要な場面では温度計で測るのが確実です。とくに乳幼児のミルクなど温度が重要な用途では、計算値に頼らず、必ず実際の温度を確かめてから使ってください。
ワット数を上げれば100度より熱くできますか?
水の場合、100度を超えて温度が上がることは基本的にありません。100度に達したあとは、投入されたエネルギーが温度を上げる代わりに水を蒸発させる働きに使われるためです。ワット数を上げても蒸発が早く進むだけで、温度計の数字は動きません。なお、油や糖分の多いものは水とは性質が違い、100度を超えて高温になることがあります。加熱しすぎは発煙や発火につながる場合があるので、油分の多いものを長く加熱しないでください。
低いワット数のほうが均一に温まるのはなぜですか?
マイクロ波が届くのは表面から数センチまでで、中心はそこから熱が伝わって温まるためです。高出力だと表面の温度だけが急に上がり、中心へ熱が移動する時間が足りません。低出力ならエネルギーの入り方がゆるやかになるので、伝わる時間が確保できて温度差が小さくなります。厚みのあるものや、チョコレート・バターのように狙いの温度帯が狭いものでは、この差がはっきり出ます。急ぐ必要がなければ低出力を選んでください。
冷凍のものは、なぜ同じ量でも時間が倍以上かかるのですか?
氷を水に変えるために、温度を上げるのとは別のエネルギーが必要だからです。この融解熱は水1グラムあたりおよそ334ジュールで、同じ1グラムを80度近く上げるのと同じ量になります。マイナス18度の冷凍品100グラムを60度まで温める場合、必要なエネルギーの半分以上が「氷を溶かす」ことだけに使われる計算です。合計すると600Wで約1分44秒となり、0度の水を同じ温度にする42秒の2.5倍かかります。冷凍食品の加熱時間が長めなのはこのためで、時間の見積もりは倍以上を想定しておくとずれが小さくなります。
低いワット数が選べない機種ではどうすればよいですか?
加熱と休止を自分で区切る方法があります。たとえば600Wで10秒動かして20秒休む、というやり方なら、平均して入るエネルギーは200W相当に近づきます。休んでいる間に熱が内部へ伝わるので、均一さの面でも低出力に近い結果が期待できます。手間はかかりますが、温度を狙いたい場面では有効です。なお、機種によっては解凍モードが低出力に相当する動作をすることもあるので、取扱説明書で使えるモードを確認してみるとよいでしょう。
まとめ|ワット数は温度ではなくエネルギー
ここまでの内容を整理します。
電子レンジのワット数は温度の設定ではなく、1秒あたりに食品へ送り込むエネルギーの量です。オーブンのように目標温度を持たないので、何度になるかは「時間」と「量」の2つで決まります。
計算は水の比熱を使います。1グラムを1度上げるのにおよそ4.2ジュール。水100グラムなら420ジュールで1度上がるので、600Wでは1秒あたり約1.4度という計算になります。20度から80度にするなら42秒です。
量が増えれば必要な時間も比例して増えます。水200グラムなら1分24秒、500グラムなら3分30秒。レシピどおりでも熱くならないときは、まず量を疑ってください。
100度に達すると温度の上昇は止まります。以降のエネルギーは蒸発に使われ、その量は温度を1度上げるのに要るエネルギーの500倍以上です。加熱を続けても熱くはならず、水が減るだけになります。このとき突沸のおそれもあるので、加熱しすぎには注意してください。
そして、狙いの温度帯が狭い調理では低ワット×長時間が有利です。マイクロ波は表面数センチまでしか届かず、中心は熱が伝わるのを待つため、ゆっくり入れたほうが全体の温度が揃います。低出力が無い機種なら、短く区切って休ませる方法で代用できます。
なお、ここで示した数値は水を前提にした計算値で、実際には容器や庫内へ逃げる熱があるぶん低めに仕上がります。あくまで一般的な目安なので、正確な情報はお使いのモデルの取扱説明書と各メーカーの公式サイトをご確認ください。乳幼児の飲食物や、加熱不足が問題になる肉・魚を扱うときは、計算値に頼らず必ず実際の状態を確かめ、判断に迷う場合は公的機関の案内に従ってくださいね。